人気記事一覧
新着記事一覧
古来より我が国には、生年月日よりも、性格よりも、まずは「血の成分」で人を裁くという恐ろしい儀式が存在する。ご存知「血液型占い」である。
「ねぇねぇ、委員長のあの几帳面さ、絶対A型だよね~」
「わかるぅ~。お辞儀の時の角度、絶対45度なのwうけるw そういや2組のイケメン君ってB型らしいよ」
「え~!? わたしと相性いいかも!これワンチャンある??」
「イケメン君もう彼女いるから残念でした~。あ、アニオタ君もB型らしいよ」
「まじ!? アニオタ君って血液あるんだ!」
血液型という、たった4つのバリエーションに人類を押し込み、己の運命から恋の成否まで決定してしまう。冷静に考えれば、これは人類史上最も大胆な「雑な仕分け」だ。
もし血液型で性格が決まるなら、世界には4種類の人間しか存在しないことになる。
しかし、現実はもっとカオスだ。現代には多種多様な人間がそこら中に跋扈している。
電車の中でリュックを前に抱えることを頑なに拒否する「鉄壁の守護神」、
「それって要するに」と言いながら話を3倍に膨らませる「要約の破壊者」、
「5分で着く」と言いながら、今まさに布団から出たばかりの「時空の旅人」。
これら多様な生態を、4種のアルファベットで語り尽くそうとするのは、もはや現実的ではない。
そこで今の時代は、「MBTI」である。
MBTI(Myers-Briggs Type Indicator)は、カール・ユングという、心理学界の偉大な「おっさん」の理論をもとに開発された。人の思考・行動パターンを16のタイプで分類する。
「わたしはISTJです」といった風に、アルファベット4文字で己を定義するのだ。
「16タイプでもまだ少ないだろ」と思うかもしれない。だが、血液型と決定的に違うのは、『なぜ自分がそうなのか』という根源的な理由にまで踏み込める点だ。
「B型だから自由奔放(笑)」で思考停止するのとは訳が違う。MBTIは自分の思考や行動の傾向を理解するための道具として使えるのだ。
驚くべきことに、海外では採用面接でMBTIを問われることもあるという。
「この人はどの環境で最も輝くか(あるいは、どこに置けば爆発せずに済むか)」を事前に見極める、採用担当者にとっては神の啓示のようなツールなのだ。
私としても、自分が輝ける場所に配置してもらえるなら万々歳である。光りすぎて周囲を圧倒させる可能性は、今のところゼロに近いが。
正直、血液型には1ミリも興味がなかった。「血液型を知れば女性との会話が弾む」という都市伝説を信じて暗記を試みたこともあるが、そもそも私には、会話のラリーを続ける相手が絶滅していた。
そんな私がMBTIに興味を持ったのは、ネット上で海外の住人に「お前のMBTIは何だ?」と詰め寄られたのがきっかけだ。答えられず、いや、そもそもMBTIという単語すら知らず、私はモニターの前でフリーズした。
情報の海を彷徨う私は、数少ない友人の一人に助けを求めた。
彼の名はGoogle。24時間365日、私の無茶振りに文句一つ言わず答えてくれる聖人だ。彼が人間なら、私はとっくにストーカー規制法で訴えられている。
Googleによれば、世の中には「無料性格診断テスト」なるものが溢れているらしい。
最近はビニール袋ですら有料だというのに、自分の人生を変えかねない診断がタダ。ありがたい話だが、逆に不安になる。
実際に試してみると、各質問に対して「そう思わない」から「そう思う」までの7段階で答えていく形式であった。
最終的な診断結果を見ると、当てはまる箇所もあるような、ないような。要するに、星座占いを読んだときと同じ感想である。
そんな中、「日本MBTI協会」という、いかにも「本家です」というオーラを纏った組織のサイトに行き着いた。そこには衝撃の事実が記されていた。
「あなたが受けたその無料診断、パチモンですよ(意訳)」
わたしが十数分かけて真剣に自分と向き合った結果出力されたのは、公式お墨付きではないMBTIだったのだ。
確かに、どこの馬の骨かもわからぬアルゴリズムに「君はこういう人間だ」と断定されるのは不快である。
初対面の上司に、一口も酒を飲んでいないうちから「君は団体行動が苦手だから、コミュニケーションセミナーに行きなさい」と説教されるようなものだ。
「うるせぇ。お前は私の何を知っているんだ。まずはそのネクタイのセンスを内省してこい」と言いたくなる。
そんなわけで、自分が何者なのか、どういった人間なのか、どうしても正確な情報を手に入れたい私は日本MBTI協会が主催する体験セッション「MBTIベーシック編」を申し込む。
このセッションの特徴は、「まずweb上で質問に答え、その回答結果をもとにMBTI認定ユーザーというプロと対面で会話しながら自分を探る」というものである。
自分のことを知るためには、他人と話さなければならないのだ。それも対面で。人見知りには試練でしかない。
費用は、10,000円(税別) + MBTI受検料&テキスト代実費4,700円(税別) 「合計16,170円」である。
高い。
こういった「セッション」と呼ばれるものに参加するのは初めてなのだが、みんなこれほど高額なのだろうか。
16,170円あれば、高級な肉が食べられる。ボリュームのあるゲームも1,2本買える。高級猫缶を与え続けて近所の猫を飼いならせるし、近所の神社の賽銭箱に全額叩き込めば、神様だって「よし、今回だけは特別だぞ」と腰を上げるレベルの金額だ。
「16,000円で自分を理解するか、それとも美味い肉を食うか」
私は、懐が軽くなる痛みに涙を流し、「お前たちのことは絶対に忘れない…」と諭吉、樋口、野口の三英傑に別れを告げた。
セッションは認定ユーザー1名と参加者最大12名で行われ、ZOOMで全員顔出しして進行する。
知らない人が一堂に会するというシチュエーションに、私の全細胞は「緊急事態宣言」を発令。
まだ何も始まっていないのに、緊張の振動で膝の軟骨は完全に消滅し、摩擦熱で発火しなかったのが不思議なほどだ。おそらく今、私の身長は物理的に数センチ縮んでおり、セッション終了時には私はモニターを見上げるほどの小人になっているに違いない。
さらに拘束時間は、午前10時から午後5時半までの「7時間半」
長い。
もはやちょっとした合宿である。
こういった「セッション」と呼ばれるものに参加するのは初めてなのだが、みんなこれほどまでに過酷な持久走なのだろうか。
そのとき突然、私の中に1つの不安が稲妻のように走り抜ける。
「途中でトイレに行けず、放尿(リリース)してしまうのではないか」
16,000円という大金を叩いてお漏らしをする。
そんな贅沢な背信行為があっていいはずがない。
万一決壊したならば、既存の16タイプを超越した「17番目のMBTI」が作られるに違いない。
OMRS(オモラシ)の誕生である。
「世界で唯一無二のニュータイプになれる…!」と数秒血迷ったが、私の脳と膀胱が「断固拒否」のプラカードを掲げてデモを起こした。私の肉体、どうやらまだ正気を保っているらしい。
さて当日、実際にセッションに参加すると、
と、ここで詳細を記載したいところであるが、残念ながらセッションの内容や結果報告書を直接公表することは規約で禁止されていることに気づいてしまった。
7時間半の思考でエネルギーを使い果たした私に、規約違反で訴えられるという「高難易度のイベント」をこなすMPは残っていない。
ちなみに、こまめに休憩が挟まれたためお漏らしせずに済んだことは、わたしの名誉にかけてここに報告しておく。
色々すっ飛ばすが、7時間半の格闘の末、わたしのMBTIは「INTP」であると明らかになった。
INTPというのは、16タイプの中で最も論理的・分析的とされるタイプである。INTPとしてはアインシュタインやニュートンの名前がよく挙げられる。
…どういうことだ。
わたしはアインシュタインなのか。
相対性理論を進化させることができるとでもいうのか。
わたしはニュートンなのか。
落下するリンゴを見ても、「あ、美味しそう」しか思わないぞ。
もちろんわたしはアインシュタインでもニュートンでもない。タイプが同じでも脳のスペックが同じわけではないのだ。
わたしが診断されたINTPの特徴を挙げると、『物事の本質や原理を深く探ろうとし、感情より論理を優先する。知的好奇心が幅広く、柔軟である一方で決断を先延ばしにしがちで、一人の時間を好む傾向がある』というものだ。
ふむふむ確かに。
全部当てはまっているのだが、『感情より論理を優先する』だけは少し引っかかる。私の論理は就寝時間を管理する機能を放棄しており、作業に没頭した瞬間午前4時を超えることが約束されている。
ちなみに『一人の時間を好む』については、好むどころか一人の時間しかないのだが、それはMBTIとは別の問題である。
わたしはセッション中、自分がINTPなのか、それともINFPなのかで長い時間揺れ動いていた。
TとF、1文字違うだけなのだが、本質は大きく異なる。
Tが強いと論理的で客観的な分析を重要視し、Fが強いと自分や相手の価値観や感情を重要視する傾向がある。正反対なのである。
正反対なのだが、わたしはどちらの性質も持ち合わせている自負があった。どちらにも当てはまるような気がしてならなかった。
確かに論理的で分析を好む。「お豆腐は柔らかいから叩き潰すとぐちゃぐちゃになるな。ぐちゃぐちゃだとおいしく食べれないから叩き潰すべきではない。」きわめて論理的である。
しかし感情に流されることもある。スーパーで売れ残っているお惣菜を見ると、なぜか胸が痛む。論理的に考えればお惣菜に感情はないし、わたしが買わなくても世界は回る。しかし『お前だけ残って可哀そうだな』という謎の感情が湧いてくるのだ。
この迷いに終止符を打ってくれたのが、認定ユーザーとの対話だった。
わたしは接客業の経験があり、業務に携わる過程で相手の気持ちに共感したり気遣いをする癖が鍛えられ、その結果、後天的にFの性質を強化した、しかし本質はTである。 というものである。
なるほど、ひどく腑に落ちた。これほどまでに腑に向かって落下したのは生まれて初めてだ。私がニュートンなら、ここで重力を発見していたに違いない。
自分一人では絶対に辿り着けなかった答え。16,000円の価値は、ここにあったのだ。
MBTIを見つけに行く過程で、「自分がどんな人間なのか」向き合う時間がたくさんあった。また、自分と違う人間がたくさんいるということも強く実感できた。人それぞれの「普通」が存在するのだと気づけた。何より、お漏らしせずに済んでよかった。
MBTIが判明してからは、自分の傾向・強みを意識できるようになったのはもちろん、相手とのコミュニケーションにも変化があった。自分とは違うという前提に立ち、良好な関係を築くためにどう行動するべきなのか意識することが増えた。
もしあなたが「本当の自分」に興味があるなら、無料診断という「パチモン」で満足せず、ぜひ公式セッションを受講してほしい。
申し込みは、公式HPよりもInstagramをチェックする方が、開催情報の「先行予約権」を得やすいのでおすすめだ。
そして最後に、これから受講する皆さまへ。 OMRS(オモラシ)にならないよう、お手洗いにはこまめに行くことを、私の名誉にかけて推奨する。
コメント